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イベントレポート

2015/2/25
平成26年度がん対策推進企業アクション年度統括セミナーを開催しました

2015年2月25日、東京都港区の電通ホールで平成26年度がん対策推進企業アクション年度統括セミナーを開催しました。今回は〈「がん」と共に生きる職場の実現に向けて~最新状況と対策の視点から~〉をテーマとして、がん経験者への就労支援を多方面から考えるセミナーとなりました。
開場前から受付に参加者の列ができるほど盛況でした
▲開場前から受付に参加者の列ができるほど盛況でした
本年度のがん対策施策の状況報告とパートナー調査結果報告
最初に、厚生労働省 健康局 がん対策・健康増進課の正林課長から「がん対策推進基本計画」の概要と、国家プロジェクトとして推進されてきた「がん対策推進企業アクション」について説明がありました。さらに、がん対策推進企業アクションに今年は300の企業・団体が新たに参画したこと、計1530の企業・団体から賛同を受け、より大きな影響力を持つプロジェクトになっていることも紹介。そして最近の動向として、厚生労働大臣が出席する会議で、がん患者会などから解雇や差別の現状が語られ、就労支援が大きくクローズアップされていると紹介。国として、厚労省として、この問題に一層の注力をしていくと語った後、降壇しました。
厚生労働省 健康局 がん対策・健康増進課の正林課長が開演のあいさつをしました
▲厚生労働省 健康局 がん対策・健康増進課の正林課長が開演のあいさつをしました
続いて登壇したのは、株式会社キャンサースキャン・代表取締役の福吉潤氏。福吉氏は、当プロジェクトのアドバイザリーボードメンバーとして、パートナー企業へのアンケートとデータ分析を担当していることを語り、調査は毎年テーマを変えて行っていると説明しました。調査報告によると、今年度、アンケートに回答した企業・団体は413。
これはプロジェクト参画企業の30%弱に当たる数字ですが、福吉氏は「低い回答率が少し残念」とコメント。それでも、がん対策に熱心な企業の実態がわかったと調査の意義を訴求しました。調査の結果1社当たり平均22.8人のがん患者がいることを報告。がん対策はもはや福利厚生レベルの問題ではなく、企業の経営課題になっていると指摘しました。
さらに自治体のがん検診で「要精密検査」と判断された対象者が、精密検査を受診していない現状を紹介。職域では、要精密検査になった人を約30%の企業が把握していないと問題提起しました。その原因・理由として「本人に任せている(50%)」、「把握する仕組みがない」「個人情報だから踏み込めない」の回答が各40%あり、これについて福吉氏は、センシティブな問題ながら、知らない限りサポートもできないと指摘。これから難しい課題を一緒に考えていく必要があると説きました。
また検査内容と精度についても言及。エビデンス(検診方法や年齢など)に基づき、奨励されたものを受診すべきとし、子宮頸(けい)がん・大腸がん・胃がん・乳がんについて、それぞれ有効な検査を紹介。エビデンスに基づかない検査を受けると、受けたつもりで、がんを発見できないリスクが生まれると語りました。福吉氏は最後に就労問題にも触れ、がん患者(社員)に特別なサポートをしている企業は11%。ここでも個人情報という壁のため、事実把握が十分にできていないと課題を指摘して報告を終了しました。(当日の説明資料はこちら
調査報告を行う福吉氏
▲調査報告を行う福吉氏
中川先生による講演「最新データにみる、職域のがん対策のこれから」
次に東京大学医学部附属病院放射線科准教授・中川恵一先生が登壇。「がん対策推進企業アクション」アドバイザリーボードの議長でもある中川先生が、「最新データにみる、職域のがん対策のこれから」をテーマとして、示唆に富んだ講演を行いました。先生は「先進国でがんによる死亡が減っているにも関わらず、日本だけが増えている」、しかもそれが「史上空前のハイペースで進んでいる」と説明。
さらに、がん発生リスクは老化によって高まるため、急激に高齢化が進んだ日本で1981年から死因のトップに躍り出ていること、その対策が追いついていないと指摘。推定値も含めて男性の60%・女性の45%が、がんにかかり、3人に1人ががんで死亡していると説明し、これからも定年延長や女性の社会進出によって、会社のなかに「がん患者」が増えるため、一層の就労支援が不可欠と解説しました。
先生は福吉氏のリポートを補足する形で、効果的な検査についても細かく説明。たとえば大腸がんの便潜血検査では2日法を選択すべきで、1日法は発見率などエビデンスからやるべきでないとしながら、それでも、被ばくが無いため便潜血1日法をマイナスとはいわない。しかし、乳がん・胃がんのX線検査は被ばくのリスクも鑑みて、対象年齢をしっかり守って受診すべきと解説しました。
先生は講演の後半で、就労支援と職域における教育の重要性を強く説きました。概要としては、就労環境の変化によって会社のなかにがん患者が増えている。現在のがん治療の多くは通院でできるから、がんと共に働くことが十分に可能。だからこそ企業の就労支援が重要と解説。そしてがん患者の多くが、離職や廃業に追い込まれる現状は、周囲のがんに対する誤解や知識不足によるものと指摘。文科省が子供に向けて「がん教育」を始めた今、知識格差をなくすためにも、大人への教育が必要と語り、講演を締めくくりました。
職域での啓発がきわめて重要と語る、中川先生
▲職域での啓発がきわめて重要と語る、中川先生
「足利銀行」と「藤沢タクシー」の2社による独自の就労支援の事例を紹介
続いて、本年度・統括セミナーのメインプログラムともいえる事例紹介。パートナー企業を代表して、まず足利ホールディングス(足利銀行などの持株会社)の取り組みが紹介されました。登壇したのは足利銀行 人事部 産業保健師の湯澤洋美さん。湯澤さんは、同社の産業保健スタッフの陣容を語った後、具体的な取り組みを紹介しました。
それによれば、同社は人間ドックを活用し、がん検診受診率向上施策を展開。単一健保に加入している30歳以上の被保険者・被扶養配偶者を対象として、がん検診受診料を会社が補助。子宮がん・乳がん検診はオプションながら、こちらにも定額の補助あり。一定年齢以上は5年に1度の検査を会社が全額負担するという、達令者制度も設けています。さらに2009年には健康休暇を設定。受診はもちろん健康保持・増進のため、休みを取得できるユニークな制度もつくっています。手厚い制度によって対象者の68%ががん検診を受診しました。
また同社は、人事・産業保健スタッフが連携し、病気を持つ人(特に長期欠勤を要する社員)の相談窓口を開設。最近は相談員の存在が周知され、面談の件数が増えているとのことでした。がんにかかった人への就労支援としては、個別カウンセリング、診察時への同席(就労環境と支援内容を主治医に説明)、社員への外部サポート紹介(がん拠点病院相談窓口など)等を実施。抗がん剤治療を受けた人が特に気になる、職場での感染症予防にも配慮。銀行のフロント業務から一時的配置換えも行っていると説明がありました。また、脳腫瘍の手術を経て復帰した社員のため、職場でてんかんの勉強会を実施。本人の安心とともに、周囲にサポート意識を植え付けた事例も紹介されました。
足利銀行の事例紹介。産業保健師の湯澤洋美さんが同社の取り組みを紹介しました
▲足利銀行の事例紹介。産業保健師の湯澤洋美さんが同社の取り組みを紹介しました
次に、藤沢タクシー株式会社が事例を紹介しました。代表取締役の根岸茂登美さんが登壇し、社員数95名、昭和15年設立という同社の取り組みを説明しました。根岸さんは同社3代目社長。家業であるタクシー会社勤務の前は、看護師として活躍し、産業保健師の資格も持つ社長です。また2代目社長の父親が胃がん、母親とご自身が乳がんを体験。がん経験者として、社員の闘病と就労を支える想いが強いことを説明してくれました。
同社では2003年以降、10名ががんに罹患(りかん)。うち3名が現在も在職中で、胃がんと前立腺がんの経験者は術後のフォローをしながら、特段の支障なく勤務中。残る1名、69歳社員の闘病と就労支援について詳細な説明がなされました。それによると2013年5月、定期健康診断で貧血の所見。社長は精密検査の受診を勧めましたが、当時は本人の危機意識が無く放置。ところが9月から下痢が続き、10月に下血。本人・家族・社長が受診医療機関を検討し、精密検査を受診したところS状結腸がんステージ4、肝臓転移との診断。
12月に開腹S状結腸切除術、その後の化学療法を見据えたポート留置術を受け、2014年から化学療法を開始し、9月に肺転移が見つかったという経緯です。この間、藤沢タクシーは就労の継続を保障。勤務時間短縮やシフトの柔軟な変更に応じ仕事の継続をサポート。また、職場全体で支援しようと同僚への呼びかけも実施しました。根岸さんは、これまで就労支援を続けることができた要因として、本人が闘病と就労への強い意思を持っていることが一番。そして、中小企業の特徴として彼と私(経営者)の距離が近く、社員と家族の判断に寄り添えたと説明しました。
藤沢タクシーの事例紹介。代表取締役の根岸茂登美さんが詳細に語りました
▲藤沢タクシーの事例紹介。代表取締役の根岸茂登美さんが詳細に語りました
国の取り組みと国立がん研究センターのプロジェクト説明
2社の取り組み紹介に続いて、厚生労働省 健康局 がん対策・健康増進課 藤下課長補佐が登壇し、がん患者・経験者の就労支援について、国の取り組みと今後の方針を説明しました。藤下課長補佐は、国民全体の2人に1人、最新データでは男性の60%、女性の45%が、がんに罹患している時代だが、治療法は進歩し、生存率も向上。がんを持ちながら通院と就労を続けている方が32.5万人もいて、この方々への支援が欠かせないと語りました。そして現状をさらに詳しく紹介。がんにかかった会社員の30%が依願退職(解雇も4%あり)、自営業では13%が廃業に追い込まれているデータを示し、これを踏まえて、平成24年に閣議決定された第2期がん対策推進基本法には、重点課題として「働く世代へのがん対策」が盛りこまれていると説明。その具体的な施策として、がん診療連携拠点病院への働きかけ(社会保険労務士など専門家の配置による相談対応など)、ハローワークと連携した各種モデル事業、企業への要請(がん患者の人材活用)などを紹介し、最後にセミナー参加者(企業・団体)に、がん患者との認識共有などをお願いし、降壇しました。
厚生労働省 健康局 がん対策・健康増進課の藤下課長補佐が今後の方針を説明しました。
▲厚生労働省 健康局 がん対策・健康増進課の藤下課長補佐が今後の方針を説明しました。
次いで国立がん研究センター・がん対策情報センターの若尾文彦センター長が登壇。若尾先生はがん対策推進企業アクションのアドバイザリーボードメンバーでもあります。先生はまず、国立がん研究センターの概要を説明。東京・築地と千葉・柏の拠点で医療とがん研究を行っていると紹介し、次いでがん対策情報センターの説明へと移行。2006年10月に開設された30人弱の小さな組織で、全国の拠点病院(409施設)に設置された、相談支援センターへの啓発やサポートを行っていると語りました。さらに、がんセンターは現在、「がんサバイバーシップの充実」に注力しており、対策情報センターがその一翼を担っていると話し、その取組み「がんと共に働くプロジェクト」を紹介。
センターのホームページに、「がんと共に働く まず一歩前へ」という特設サイトを設け、著名人のがん体験や有識者からの寄稿、座談会記事などを掲載していること。さらに、どうしてもがんセンターのサイトはがん患者や家族の閲覧が中心になるため、ビジネスマンにも情報を提供するため、日経ビジネスオンラインと連携して情報提供を行っていることなどを紹介。また、そこでなるべく個別事例を数多く紹介しようとしていると説明しました。若尾先生のコーナーの後は10分間の休憩へ。
若尾先生による「がんと共に働くプロジェクト」の紹介
▲若尾先生による「がんと共に働くプロジェクト」の紹介
セミナー登壇者全員によるパネルディスカッション
休憩を挟んだ後は、パネルディスカッション。セミナー登壇者全員が再び登場。また今年度からアドバイザリーボードメンバーに参加した阿南里恵さんも登壇し、自己紹介をしました。阿南さんは現在33歳。23歳のとき子宮頸がんを宣告され子宮を全摘出。その後、職場復帰を目指すも叶わなかった自身の経験、闘病の苦しさを踏まえ、現在はラジオ番組「がん対策中小企業アクション(FMやまと)」でパーソナリティーを務めています。
番組では胃がん・胎児性がん・子宮頸がん・大腸がんなどがん経験者を紹介していますが、阿南さんはそこで「男性ばかりの職場で婦人科検診が受けられなかった」事実などを知り、認識を新たにしたと説明。これからも積極的に中小企業へ呼びかけをしていくと意欲を語りました。
パネルディスカッションでは、闊達な意見交換がされました
▲パネルディスカッションでは、闊達な意見交換がされました
その後も登壇者のみなさんからさまざまな意見が発せられるなか、阿南さんから「私自身、再就職を考えているが履歴書に病歴を書くべきか否か」という質問が。その質問に対して、中川先生はなるべくオープンにした方が良いと思うと考えを示し、若尾先生も全く支障なく勤務できるなら別だが、周囲のサポートが必要なら情報を開示し、そのうえで私はこういうことができるとアピール。あとは企業の判断に委ねるということでしょうと回答しました。
ここでも個人情報を取り扱う難しさ、がんの正しい知識を広めていく重要性がクローズアップされることに。そのほか幾つかの意見交換と会場からの質問と回答があり、セミナーは終了しました。
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